Gary Hines introduction by Taro Kijima (Japanese)

The Introduction of
Gary Hines ゲイリー・ハインズ
世界最高のクワイアーディレクターが
彼でないなら、誰だ。



特集記事 by 木島タロー

Special Topic about an Artist

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グラミー受賞さえ、
功績の一部に過ぎない。

 オリジナルアルバムでの1992年グラミー「ベストクワイアーゴスペルアルバム」賞 (*1) や、数々の大賞 (*2) の受賞は、確かに彼の偉業だ。
 しかしそれが彼の全てでもなければ、最大の功績でもない。
 彼と、彼が35年間率いて来た、誉れ高き
The Sounds Of Blackness (SOB)。

       スティービー・ワンダー
 ルーサー・ヴァンドロス
       クインシー・ジョーンズ
 マイケル・ジャクソン       
       プリンス
 アレサ・フランクリン
       エルトン・ジョン
 サンタナ・・

 彼らがそのプロジェクトに参加して来たアーティストには、身震いするような名前が並び、オバマ大統領夫妻やジャネット・ジャクソンもSOBの大ファンであると公言する (*3)。
 ハイクオリティーなクワイアーがゴスペル界には溢れる現在でさえ、このようなクワイアーは他に例を見ない。

 アメリカの「ゴスペル音楽史」にではなく、「音楽史」に大きく名を残すクワイアーがたった一つあるとしたら、それは Sounds Of Blackness であろう。

 「有名なゴスペルディレクター達の一人」ではなく、人が Gary Hines と Sounds Of Blackness にだけ惚れ込む理由がある。

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Grammy Winning:
The Evolution Of Gospel
by Sounds Of Blackness

*1: 1992年Best Gospel Album by Choir or Chorus. 参照LinkIcon
*2: Stellar Award, International Time For Peace Award, Soul Train Award etc..
*3: Gospel Music Bites等。 参照LinkIcon

注:多くのトップアーティスト達の作品はここでは公開出来ませんので、以下の記事にリンクしているYouTube動画はごく限られた資料となります。

出会い ・・「禅」の一文字

Billboard Live での出会い

zen.jpgBillboard Live TokyoでのSounds Of Blacknessのライブは他のどんな来日アーティストよりハイクオリティーで、強烈で、最高だった。

 ライブの後、サイン会の為に着替えて客席に現れたゲイリーのTシャツは僕を驚かせた。彼の胸には大きく「禅」という筆文字が描かれていたのだ。

 SOBを"R&Bグループ"と捉える多くの日本人にとっては、ただ単に日本人サービスの一つに見えただろう。ゴスペルグループだと思って足を運んだクリスチャンの一部は、彼がその文字の意味を正確に知らないか、もしくはクリスチャンとしてちゃらんぽらんだと思ったかもしれない。

失礼な質問

 僕はゲイリーに近寄っていってipodケースの裏にサインしてもらい、ありがとうと言って立ち去ろうとし、一歩引いてから立ち止まり、その一歩を戻って、決心して尋ねた。
「失礼ですが、意味を分かって着ていらっしゃるんですか?」

 まさに失礼なその質問に踏み切る衝動を、僕は押さえられなかった。アメリカ人は自分で意味がよく分かっていない漢字を身につけたりタトゥーにしたりする事が時折ある。意味が分かっているなら、日本人サービス、という理由で異教の教えを身につけるゴスペルアーティストはいない。日本人の人気はとれても、クリスチャン仲間を失ってしまうし、神はそんな事を喜ばないと考えている。

 ゲイリーは笑顔で答えてくれた。「勿論知っている。仏教における精神の平和に至る為の道の事だ。我々はみな兄弟として平和な世界を造っていかなくてはならない。」

希望と、交信の始まり

 これほど名の売れたクリスチャンの中にもこんな人間がいるのだ、という思いに僕の心は震えた。僕の信仰のスタイルが少々通常の教会人と違う事を多少口に出せるようになっては来たが、ゴスペル人達の前でその全てを口にして受け入れてもらえると期待した事はない。

 長年の黒人教会生活の中で、教会人達からは決して得られなかった期待を初めて僕はこの胸に得る事が出来た。

 僕は、我が師にして親友であるM・D・ストークス以外では、世界でたった一人惚れ込めるクワイアーディレクター、ゲイリーとの交信を始めた。

再会へ・・

Tribute To The Sounds Of Blackness

 DUCの2ndアルバム、New Chaperには、Sounds Of Blacknessに捧げる、と副題を打った一つの楽曲が入っている。僕はこのアルバムをアメリカのプレス会社から直接ゲイリー本人に送ってもらった。聴いてくれたゲイリーは、大変高い評価をしてくれた上、New Chapterをゲイリー・ハインズが高く評価してくれている事を公にして構わないと言ってくれた。


newchapter_jacket_bygrab.jpgメールのやりとりの中、僕自身が黒人の師匠、黒人の牧師、黒人の仲間に学んだゴスペルミュージシャンである事、しかしそれでもなおDUCがゴスペルクワイアーとは一線を画している事、それらが伝わって行く過程があった。

申し出

 DUCのシングル曲「Star People」の動画を僕からゲイリーに届けた後、たった17人のこのクワイアーを指揮する為に日本へ出向く事に興味があると言うゲイリーの言葉を、にわかには信じられなかった。
 DUCは単立のアーティスト・クワイアーだ。
 ゴスペルの世界でよくあるように、支部を持って来日ディレクターのワークショップを大々的に広告して行なうようなクラス組織でもキリスト教会組織でもない。

 僕らは確認しあった。

 ゲイリーは、大きなイベントや大きなワークショップの為にではなく、それがDreamers' Union Choirであるという理由の為に来日する。

 DUCは、彼が有名なディレクターの一人だからではなく、それが他の誰でもないSounds Of Blacknessのゲイリー・ハインズだからその指揮に憧れる。

この音楽の未来へ

 インスピレーショナルクワイアーであるDUCが、どんなゴスペルクワイアーにも吹かせる事が出来ない風をゲイリー・ハインズと吹かせる、そのアイディアに、DUCメンバーは興奮した。

 DUCとゲイリー双方の音楽キャリアに新たな章をもたらす事を祈って、2011年のワークショップ以降、僕らはコンタクトを続けている。